水面の蝶(6)

 今回こそ。
 メロディ発売前に完結まで持っていくぞ、と誓ったものの、
 今日の時点で毎日公開しないと間に合わない算用なんですけど……手遅れ感ありすぎ(^^;

 書きながら公開してて、その上で連日UPされてる方、心の底から尊敬します。

 





水面の蝶(6)





 一番最初に思い浮かんだのは、彼女とよく行った公園だった。

 彼女に別れを告げられたのもこの場所だ。
 8年前、そこは休日を楽しむ人で賑わう憩いの場所で、きれいに整備された樹木と芝生、花壇と噴水が人々に潤いを与えていた。長い年月の間に設備は古び、遊具には傷みが目立つようになっていたが、大きな樹木と噴水は昔日のまま、青木を迎えてくれた。

 土曜日の午前中、人は多かった。
 指名手配をされて逃げているのだとしたら、こんな場所には来ないだろう。人目を避けて、もっと暗い場所に隠れるに違いない。
 そう思いながらも、青木は公園を一巡りすることにした。懐かしさに駆られたせいもある。遊歩道沿いの花壇にも、木陰のベンチにも、彼女の思い出がたくさん残っている。

 あまりにもはっきりと彼女のことを思い出せる自分が、青木は意外だった。
 若き日の自分と美月の幻が、其処此処に見える。
 8年も前のことなのに。その姿は鮮明に詳細に。夕暮れの風に靡いた長い髪を梳く彼女の、指の形まで覚えている。
 自分はもう、薪以外のひとは見えないとずっと思ってきた。でも、こうして記憶の中の彼女を現実の場所に投影すれば、こんなにも彼女は美しい。

 彼女とベンチに座って、色んな話をした。学校のこと、仕事のこと、ふたりの未来のこと。
『一行、警察官になるの? かっこいい。正義の味方ね』
『うん。でも、オレは一番に美月を守るよ。何かあったら、いや、何もなくても呼んで。パトカーのサイレン鳴らして吹っ飛んでくるから』
 そんな彼氏イヤ、とはじけるように笑った、彼女の笑い声を青木の耳は覚えている。身を二つに折って笑い転げる彼女の姿を、青木の目は覚えている。

『じゃあ約束よ。必ず来てね』
 そう言って自分の小指と絡めた彼女の、簡単に折れてしまいそうな細い小指の感触を、青木の肌は覚えている。
 何よりも、青木の心が。
 あの日この場に置き去りにした青木のこころが、彼女を求めて止まなかった。

「美月……」
 唇が覚えている彼女の名前を青木が形取ったとき、噴水側の樹木の陰に隠れた彼女の幻影のひとつが、ゆっくりと揺らめいた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま、こんにちは。(^^

> いや~!青木くんが過去と浮気してる~(ToT)

青 「ご、誤解ですっ、浮気なんてそんな恐ろしいコト、ちょっと昔を懐かしんでただけで」
と、本人は言ってますが。
あおまきすとはそれすら許せないんですよね、分かります! だもの、原作の青木さんに至っては、むにゃむにゃ。(^^;


> でも、最高潮の時に昔の恋人の名前叫ぶよりはましかぁ(笑)

言われてみれば!(爆)
うちの薪さん、怒る権利無いよ~。(T▽T)

昔のこととはいえ、あれだけのことをしておいて、もうどんだけ女王様なんだか。(^^;
Sさまご指摘の通り、まさに、女王様とドレイです☆
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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