水面の蝶(15)

 明後日ですね。
 みなさん、どきどきしてますかー? 

 前回はみんなにメイワクかけちゃったので、今回はそんなことのないよう、ココロの準備をして挑もうと、懸命に精神修行を積んでいたのですけど。 ←具体的には青雪さんの結婚式とか家庭を妄想していた。 おかげでこの2ヶ月、何も書けなかった。(--;
 考えを突き詰めるうちに、「あれが薪さんなんだなー」と思えるようになって来ました。
 自分の恋心には蓋をして、相手の幸せのために力を尽くす。 わたしが好きになった薪さんは、元からそんな人でしたよ。 4巻で、会議を抜け出して雪子さんと喋ってる青木さんの代わりに書類を配る薪さんに惚れたんだもん。
 最終回でやっと、わたしの一番好きな薪さんが帰ってきたんだなー、と思えば、それはそれで感慨深いです。
 青木さんに恋をして、雪子さんに嫉妬して、修羅の果てに辿り着いた彼の現況を、祝福してあげたいです。

 事件に関しては純粋に面白いと思って読んでたので、ココロの準備が必要なのはこの件だけです。 腐女子の悲しいサガっすね☆






水面の蝶(15)






 あーん、と口を開いて、青木は薪のほうへ顔を向けた。口の中に入ってきた味の薄い卵焼きを噛み締め、満足そうに目を細める。
「美味いか?」
「はい。薪さんの卵焼きには全然敵いませんけど」

 リクライニングを起こして背中に枕を入れ、ベッドに座ったまま、青木は口だけを動かして食事をしている。薪が手ずから青木にごはんを食べさせてくれるなんて、一生の間に一度、あるかないかの大イベントだ。このチャンスを逃してなるものか。
「ほら、野菜も」
 箸ではつまみにくいプチトマトは、ヘタを取って、指でもって食べさせてくれる。プチトマトと一緒に口の中に入ってきた薪の細い指先をチュッと吸って、青木は悪戯っぽい眼で薪を見た。薪はちょっと赤くなり、照れ隠しに慌ててご飯を箸で掬い、青木の口へ……ああっ、もう本気で腕の一本くらい捥げてもいいっ!

「早く退院して、薪さんのごはんが食べたいです」
 青木が切実な口調でそう言うと、薪は食事のプレートに『普通食』と書いてあるのを確認してから、
「昼飯に何か作ってきてやろうか」なんて優しいことを言ってくれる。薪と出会ってから8年、こんなに彼にやさしくしてもらえたのは初めてじゃないだろうか。
「本当ですか? じゃ、ハンバーグとオムライスと鳥唐揚げと、牛肉の牛蒡巻きにポテトサラダに春雨とつくねのスープと」
「ちょっと待て、どんだけ食う気だ。おまえ、本当に病人か?」
 傷口は痛いが、内臓に怪我がないから食欲はある。それに、薪の作った料理ならいくらでも食べられる気がする。
 疑わしそうな目をしながら、薪は汁碗を取った。みそ汁も薄いと見えて、上部は澄まし汁、下部はみそ汁の二重構造になっている。薪は碗の底を箸で揺らして全体の味を均一にすると、身を乗り出し、汁碗を両手で持って青木の口元に近づけた。

「あのう、できればみそ汁は口移しで……」
「ばっ! そんなことできるわけないだろ、病院だぞ!」
「でも、スプーンついてないし。汁碗から直接だと、こぼしちゃいそうだし」
「うっ……」
 口元を引きつらせて、薪は椅子に座り直した。まあ、個室だし、と口の中で呟くと、みそ汁を口に含む。
 ちらりと青木を見る、恥ずかしそうな上目遣いの瞳がたまらなく可愛い。軽く尖らせた艶っぽいくちびるとか、透けそうな頬に上った朱色とか、ためらいの形に固まる指の形とか。何もかもが好ましくて、ありえないくらい愛しくて、青木は思わず亜麻色の髪に右手を差し入れる。
 びくっと身を引く薪の様子が、これまた可愛くて。数え切れないくらいベッドを共にしてお互い知らないところはない仲だというのに、失われない清純は薪というひとの特徴であり、奇蹟だと青木は思う。

「薪さん……」
 尚も身を引く薪に追いすがり、捕らえ、その身体を抱きこんで、青木は彼の整った顔を至近距離から眺める。大きな亜麻色の瞳がいっぱいに開かれて、その中に映し出された熱い目をした男の顔がどんどん近付いてきて―――。
 プ――ッ、という破裂音と共に、青木の顔面に粘っこいみそ汁が吹きつけられた。みそ汁で顔洗って出直せ、と言葉で叱責されたことはあるが、実際にその洗礼を受けたのは初めてだ。

「ひっど……ひどいですよ、薪さん」
 薪の口の中に入っていたものだから、唾液と混ざってネバネバする。タオルで顔を拭きながら青木が抗議すると、薪はヒステリックな声で、
「おまえ、歩けるじゃないか!!」
 あ、しまった。
「傷が引き攣れて腕も動かせないって、ウソだったのか!?」
 だって……薪さんに食べさせてもらいたかったから……。
「おまえというやつは~~~~~!!!」

 自分が騙されたことを知って、薪はギリギリと歯噛みし、でもさすがに入院患者に手を上げることはできなくて、不貞腐れてパイプ椅子にふんぞり返った。両腕を組み、ついでに足も組んで、金輪際おまえの世話はしないぞ、と意思表示をしてみせる。
 青木は仕方なくベッドに戻って、残りの食事をぽそぽそと食べた。薪に食べさせてもらったのと同じ料理のはずなのに、びっくりするほど不味かった。

「ったく。おまえも図太くなったもんだ。昔はあんなに僕のこと怖がって、ビクビクしてたくせに」
「いつまでも新人じゃありませんから。成長したと言ってください」
「言い様だな。人間、変われば変わるもんだ」
 はっ、と吐き捨てるように鼻で笑って、薪は足を組みなおした。スマートなスラックスが、膝の細さを際立たせる。
 青木のことばかり言うけれど、薪だって、ずい分変わった。
 知り合ったばかりの頃はこんなに我儘じゃなかったし、意地悪でもなかった。もっと穏やかで物静かで、大人の分別を持っていた。それがいつの間にか、こんな天邪鬼でコドモでフクザツな性格のオヤジに……。
 しかし、最初のころの薪より今の薪の方がずっと可愛く思えるのは何故だろう。
 悪役俳優みたいな白い眼で青木を睥睨する薪を見て、そのヒールめいた顔つきに心が浮き立つ自分に気づいて、薪の言うとおり、自分はやっぱり変わったのかもしれないと青木は思った。

「彼女も、そういうことなんでしょうか」



*****

 見渡せば、病院でエッチしてるカップルもいると言うのに、うちの二人ときたら。(笑)
 てか、
 これが鈴木さんだったら、薪さん、怒ったりしないんだろうな。 なんでかな、今では鈴木さんより青木さんの方が好きな筈なんだけどな。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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