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天国と地獄9 (1)

『あおまきさんおめでとう記念作品 エピローグがなかったらお蔵入りになってたSS 第2弾』 

 てかこれ、エピローグ関係なしに、あまりにもバカバカしくて公開するの迷ったんでした。
 こんなんばっかり公開してると、しづ、バカだと思われちゃうー。 ←手遅れ。

 5歳児の日記を読むつもりで読んでください。(なんて腐った5歳児……)
 よろしくお願いします。







天国と地獄9 (1)










 例えば休日の昼下がり。
 薪はソファの座面に片足を抱えるようにして、異国の言葉で書かれた本を読んでいる。それは青木には馴染みのない文字の羅列で、地球のどの辺りで交わされているものなのか見当もつかないのだけれど、ページをめくる細い指先の軽やかさで、彼の興味を惹くことが書かれているのだと解る。
 頁の角から離れ、艶めかしいくちびるに当てられる人差し指は、彼が何事かを考えている証。すっと横にずらされて、耳上の頭髪に差し込まれる手指は、彼の少しだけ伸びすぎた前髪を退けて真っ白な額を露わにする。
 何気ない動作。それがどうしてこんなに美しいのだろう。
 見ているだけでため息が漏れる。時折またたく長い睫毛も、控えめに持ち上げられる口角も、青木の眼を捉えて離さない。

「盗聴モノに興味があるなら、脇田課長に相談してみるが」
 唐突に問われて青木は首を傾げる。薪の口から何の脈絡もなく出てきたのは組対5課の課長の名前だが、どういった思考ルーチンが彼を導き出したのだろう?
「もう5分くらい、そのページを見てるから」
 気が付くと、眺めていたはずの車雑誌はいつの間にか購入目的の新車特集ページを遥かに離れて、若い男子をターゲットにしたDVDの広告ページになっている。青木は慌てて雑誌を閉じると、夢中で自己弁護をした。
「違いますっ、オレは別に」
「若いってのはいいな。色んなことに興味を持てて」
「だから違いますってば」
「隠す必要はない。おまえも若い男なんだし、自然なことだろ。僕だっておまえの年には30人も彼女がいて毎晩違う娘と」
 薪の冷静が表面だけなのも、華やかな武勇伝がハッタリなのも、青木には分かり過ぎるほど分かっていたけれど。突き放されると面白くないのがオトコゴコロ。青木が他の女性に興味を持つ素振りを見せたら、嫉妬する真似だけでもして欲しい。

「そうですか。じゃあ、大○優ちゃんの写真集、買ってもいいですか?」
「ああ、あの娘、可愛いよな。まあ僕のフカキョンほどじゃないけど」
 写真集くらいじゃ動じないか。かくなる上は一晩くらい、友だちの家に泊めてもらって携帯の電源切って、と半ば意地になった青木が愚策を企てるのに、薪は突然話題を転じ、
「この本に書いてあるんだけど。イスラム教徒って、不義密通は死罪なんだな」
「えっ」
 物騒な言葉に、思わず雑誌を取り落とす。大型のホッチキスで留められた雑誌は自然に真ん中のページが開いて、薪の誤解を招いた広告が再び顔を出した。薪はそれを冷たい瞳で見据え、尋ねられもしない雑学の補足説明にかかる。
「死刑方法もすごいぞ。不貞を働いた男女は首まで土に埋められて、何十人もの同胞から石をぶつけられるんだ。死ぬまで」
 喋りながら薪はソファを降り、青木の方へと歩いてきた。床に落ちた雑誌を拾い、問題のページを青木に突きつけるように差し出すと、青木と眼を合わせてニヤリと笑った。
「日本に生まれてよかったなあ、青木?」
 他人に殺されるか薪に殺されるかの違いで、結果は同じなのでは?

 青くなって黙り込んだ青木に、薪は薄ら笑いで踵を返す。表面には出さないだけで、薪はものすごいヤキモチ妬きなのかもしれない。
 今となれば思い当たることもある、例えばマラソン大会のとき。顔も知らない女子職員たちが青木の周りに寄ってきて、それを薪が不愉快に思っていたことを岡部から聞いた。だから、これまで青木はできるだけ女性を遠ざけるようにしてきた。身に覚えのない誤解は受けたくない。
「写真集は止めておきます。車の資金に回します」
 もとより、青木には必要ない。どんな美麗画集よりも魅力的な動画が目の前に展開されているのだ。実際、写真集より断然ヌケるし。

「……僕のフカキョンを貸してやってもいいが」
 自分の脅しに萎縮して欲しいものを諦めた恋人を哀れとでも思ったか、薪は秘蔵の写真集を青木に貸してくれると言い出した。薪の好意は青木にはかなり微妙だ。薪にとっては宝物でも青木にしてみればただの紙切れ、否、恋敵のアルバム。うれしくも何ともない。
「けっこうです」
「遠慮するなって」
 ひょいとソファから尻を浮かすと、薪は壁際に置いてある仕事机から『僕のフカキョン』を持ってきた。
 青木には女優の写真集も買わせてくれないくせに、自分はお気に入りのアイドルの水着写真集を自作している。身勝手な人だ。色んな意味であり得ないと思う。
 ほら、と手渡されたスクラップブックは、百人もの人間に読み回された雑誌のように青木の手に馴染む。この冊子が誰かの手で、しょっちゅうめくられている証拠だ。
 破り捨ててやろうか。

「大事に使えよ」
 どういう使用目的で貸してくれる気でいるのか、怖くて聞けない。
「汚すなよ?」
 汚物の詳細に関しては絶対に聞きたくない。
「じゃあ僕は席を外すから、おまえはゆっくり」
「あのですねっ!」
 たまりかねて青木は叫んだ。薪の自分勝手は心得ているし、それは彼の魅力の一つとさえ思えるほど薪にメロメロの青木だが、どうしても許せないことがある。己の貞節を疑われることだ。

「オレは、薪さん以外の人に性的魅力を感じません」
「無理するな。ほらほら、これなんか胸の谷間がスゴイことになってて」
 手ずからお勧めのショットを紹介してくれるが、完全に有難迷惑だ。どんな男もノックアウト間違いなしと、薪は自分の審美眼に絶対の自信を持っているらしいが、青木の眼には『そういうカタチのモノ』にしか見えない。青木の情動を呼び覚ますのは彼女の唇やお尻のラインではなく、それを辿る指先だ。短く切られた桜貝みたいな爪、白くてやさしい指。あのほっそりとした手が自分の肌を辿り、深い場所に触れることを思うとゾクゾクする。

「じゃあ、これでどうだ!」
 眼を輝かせるどころか写真に見向きもしない青木に苛立ちを募らせた薪が突き付けたのは、どうやって手に入れたのか、というかこの写真にいくら払ったのか尋ねたくなるようなヌード写真。いやちょっと待った、これって。
「これ、合成ですよね? 本物と臍の形が違いますし、ほら、内股の黒子も水着の方には映ってない」
「青木」
 はい、と写真を返しながら顔を上げると、薪はえらく真面目な顔になっていた。
「身体の具合でも悪いのか」
「いえ、元気ですよ」
「嘘を吐け。僕とくっついて座ってるだけで直ぐに反応しちゃうおまえが、彼女のヌードを見ても無反応なんて。本当は、おなか痛いんだろう?」
 オレの病気って、腹痛以外バリエーション無いんですね……。

 薪の心配は見当違い、青木は元気だ。恋人の杞憂を払うためには、それを証明する必要がある。かような論法で青木は、自分に都合の良い行動理由を捻り出した。
 とん、と軽く薪の肩を突いて、バランスを失った彼に口づける。不意打ちを食らって慌てる薪の身体をソファに押し倒して、ぎゅっと抱きしめる。シャツのボタンを外して肩から胸を露出させ、細い首筋に舌を這わせれば、青木の分身は即座に熱を持つ。それを自覚して薪の手を導くと、薪は眼を丸くして青木の顔を不思議そうに見上げた。
「ほら。元気でしょう?」
「青木……」
 突然の行為にショックを受けたのか、薪は困惑の表情を浮かべていた。しまった、驚かせてしまったか。
 薪はまだ自分が欲望の対象にされることに慣れていなくて、だからいつも緊張感でいっぱいの彼を宥めすかしてベッドに連れ込んで、それでもゴールは遠いのに。今の青木は彼の誤解を解きたかっただけで何もする気はなかった、でも薪にはそんなことは分からなかっただろう。いきなりオオカミになった恋人が恐ろしかったに違いない。

 驚かせてごめんなさい、と謝罪する青木に、しかし薪は深刻そうに眉根を寄せて、
「僕と一緒にお医者さんに行こう」
 なんでっ!?
「どう考えても異常だ。女性の裸を見ても何にも感じないのに、オヤジの胸見て欲情するなんて」
「いや、オレだって別にオヤジなら誰でもいいってわけじゃ、ってなんて言い訳させるんですか!?」
 どんだけヘンタイだよ、オレ!!

「だって今の現象を客観的に説明するなら、彼女の胸より僕の胸のほうがムラムラくるってことだろ?」
「はい」
 薪の論旨を、青木は頷きと言葉で肯定する。
 だって仕方ない。昔からそうだった、青木は好きになった相手以外には欲情しない。青木にとってはこれが普通のことなのだ。現在、青木が愛しているのは薪一人。だから彼以外の裸には反応しない。当然の帰結だ。
 が、薪には青木の常識は理解できないようだった。
「まさかおまえ、真性のゲイになりかけてるんじゃ……早く病院へ行って治療しないと」
 違います、てか、ゲイって病気じゃないしっ!

「これは恋の病ですから。医者じゃ治せません」
 プライベートの薪はおとぼけ魔人。ツッコミどころは山ほどあるが、此処は力づくでもロマンチックムードに持って行く。だって大事なことだ。
「オレが欲情するのはあなただけです」
 この世で一番愛してます、あなただけが好きなんです。
 青木はそう言ったつもりだったのに、薪は何故だかものすごく困った顔をした。あまつさえ、口中では小さく「ええー……」とドン引く声が。

 欲情なんて言葉を使ったのが拙かったか。あからさま過ぎた。
 薪はオヤジでエロトークも好きだけど、経験自体はびっくりするくらい少なくて、だから自分のことになると異様に純情だったりもする。男同士がどうやって愛し合うのか、具体的な方法を知ったのもついこの間だし、そのことで気を失うほどショックを受けていた。
 あれを自分がやるのかと思ったら気が遠くなった、と後で告白されたが、それでも自分には無理だとか他を当たってくれなんて後ろ向きなことは言わず、「頑張ってみる」と呟いた彼の健気さが愛おしくて、青木はますます彼が好きになった。

「あ、いや、四六時中そんな眼で見てるわけじゃないですよ? 上司として尊敬してますし、仕事のときはカッコイイと思ってます。だから職場ではそんな気は起きませんし、こうして家にいる時だって、一緒にいられればそれだけで幸せだと」
 青木が懸命に薪の気持ちを引き戻そうと言葉を重ねるのに、薪は何やら深刻に悩み始めてしまった。青木が薪の上から退き、彼に身体の自由を返しても、ソファの上に仰向けに寝転がったまま。シャツのボタンも留めないで、いっそ青木に働かれた狼藉を見せ付けるように指一本動かさず、天井を睨んでいる。
「あの、薪さん、すみませんでした。もうヘンなこと言いませんから」
 仕方なく、自分が外したシャツのボタンを元通りに掛け、青木は薪の背中を抱くようにしてソファに座らせた。今夜のレッスンは延期したほうが良さそうだ。

「青木。今日は帰ってくれ」
 泊まりも拒否されてしまった。警戒されたらしい。せっかくいいところまで行きかけてたのに、これでまた薪が昔みたいに「やっぱり男同士なんてあり得ない」とか言い出したらどうしよう。
「あ、青木」
 不吉な予感に足元がおぼつかない青木に、薪の声が掛かる。
 なんてヒドイ、この上追い討ちを掛けようと言うのか。「しばらく距離を置こう」なんて言われたら泣きますからね。20歳超えた男だって泣くときは泣くんです。

 身構えた青木の頬を小さな両手が包み、唇に薪の唇が触れた。あれっ? と混乱したのは束の間、いつもの別れ際のキスだと分かる。
「明日、研究室でな」
 ひらひらと手を振られて、青木はマンションから追い出された。夕飯どころか午後のお茶の時間にも到らなかった。こんな休日は初めてだ。
 マンションから出て、恨みがましい気持ちで薪の部屋の窓を見上げると、薪が窓際に立ってこちらを見下ろしていた。青木に気付くと、彼は軽く頷きながら拳を胸の前で握り、その仕草はガッツポーズにも見えたが、ひとりで何を頑張るというのか。

 彼の真意がさっぱり掴めず、青木は怪訝な顔で薪を見上げる。その視線を拒絶するように勢いよくカーテンが引かれ、道端で青木は途方に暮れたのだった。





テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。

> あのエピローグがあると、こういう展開もありえるかも・・という気もしますね(^^)

ないない。 『僕のフカキョン』はない。←そこ!?
うーん、未だに原作のお二人の濡れ場は想像がつかないんですけど、もしそうなったとしても、
薪さんは、思っても言わないと思うなー。 てか、薪さんにそんな気を使わせたら青木さん、シメます。


> 男爵薪さん、写真ならいいけど、本当に浮気したら怒るんでしょうね(^^;)

どうだろう。
本編の薪さんはヤキモチ妬きだけど、男爵は書いてみないと、あ、いや、
怒ってましたね。 『ハプニング』で、目一杯怒ってた。 忘れてました。


> 窓辺のガッツポーズ?は何だったんでしょう!?

ガッツポーズは、そのまま素直に、「頑張るよ」です。 愛の証です。 もちろん、男爵だから努力の方向は間違ってますケド。(・∀・)
くだらねー、と失笑される自信あります。 暑さを忘れて笑っていただけると嬉しいです。(^^



Rさまへ

Rさま、こんにちは~。

ホント、毎日暑いですねー。(--;
オリンピックは、選手のみなさん、頑張ってますね。 わたしは運動が苦手なので、みんな異星人に見えます。 どうやったらあんな風に身体が動くんだろう。


> 男爵様のガッツポーズ、何やらまた突拍子もないことをしでかす気なのではと心配です。

彼は彼なりに青木さんの為に頑張るのですけど、その方向性がズレてると言うか全く相手の為になってないと言うか……今回も、男爵の称号に恥じない(?)滑りっぷりです。 笑ってやってください。


> 薪さんの同窓の大学出身の方は

あら、そうなんですかー。
頭いい人の代名詞みたいな大学なのに、一般常識に於いては、そんな面もあるんですね。 なんか可愛いです。(>m<)

携帯電話は、わたしも全然着いて行けてなくて~、
こないだ初めて知ったんですけど、着メロって、機種変更したらもう一度お金を払って取り直しなんですって? わたし、一回買ったものはデータ移動できるものだとばかり思ってて。 
だって、CDは一枚買えばプレーヤーを買い替えても聞けるでしょ。 同じじゃないの? と義弟に言ったら笑われました。 知らなかったー。 

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Sさまへ

Sさま。
お返事、こちらで大丈夫でしょうか? メールの方がよろしければ、仰ってくださいね。


Sさまのご決断、
きゃー、頑張ってください! 応援してます!

ご質問の件ですが、
このジャンルなら「少女漫画」でよろしいのではないでしょうか? 後から変更することもできたと思いますし。
ちなみに、わたしのところは小説しか置いてないので、「小説・文学ジャンル」の「二次創作」にしてます。


MADですかー。
いいなー、Sさま、絵心のある方なんですね。 羨ましいな~。
開設したらURL教えてくださいね。
楽しみにしてます。(^^


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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